(don't get any) Big Ideas

音楽周りのあれこれかれこれ

RADIOHEAD@Summer Sonic 2016 大阪 東京(8/20,21)

遅ればせながらSummer Sonic 2016 大阪 東京(8/20,21)のRADIOHEADの感想をまとめてみようかと。

結論から言ってしまうと今回のライブはとにかく凄まじかった。他の方が口々に「細かいことを挙げるまでもなくただただ圧巻のパフォーマンスだった」と言っているのを目にしたけど、まったくもってその通り。僕も分析的に色々考えるのは蛇足だろうなと思ってはいるけど、やはり観た人の想像力を刺激し色々な感情を喚起させるのがRADIOHEAD。うまい具合にまとめるのは他の方に任せるとして、今回は色々と突っ込んで書いてみる。長いよ。ごめんよ。

 

 『A Moon Shaped Pool』ってどういう作品?

前置きをもう少し。4年振りの来日、13年振りのサマソニというのもあって「あの曲やるのかな!」みたいな盛り上がり方が目立っていたけど、忘れてはならないのがこのライブは5月にリリースされた最新作『A Moon Shaped Pool』のツアーであること。そして、形式上は最新作ツアーを名乗りつつも最新作はほどほどに過去のヒットメドレーをするバンドとは違い、彼らのセットリストは最新作が核となったものであること。これはサマソニ前までのツアーセトリを見てもわかる。

さてさて『A Moon Shaped Pool』はどういうアルバムだったのか。正直に告白してしまうと、僕個人としては幾分か予習不足だったのもあって「アンビエントで美しい、でもいまいち捉えどころのないアルバム」という印象だった。ただ、無機質で非人間的な音源がフィジカルな躍動感ある表現に昇華された『Kid A』しかりスタジオワークとライブワークを繰り返す試行錯誤の中出来上がった大傑作『In Rainbows』しかり、彼らの音楽はスタジオ音源とライブが揃ってこそ真価を発揮するもの。どんな変化があるだろうかとわくわくしながら当日を迎えた。

 

8/20 大阪編〜現在進行形のRADIOHEAD

はやく本編入れよという声が聞こえてきそうだけどいよいよ本編。8/20大阪舞洲会場オーシャンステージ。時刻は19:15頃。サウンドチェックが押していたのもあり、各所で「まだか!まだなのか!」と言わんばかりの声が湧き上がり、異様な緊張感が漂う中ついにRADIOHEADが登場!

緊張感そのままになだれ込むように始まったのは"Burn The Witch"。『A Moon Shaped Pool』のオープニングトラックだ。この曲の大胆なストリングスアレンジがバンド編成だとどうなるのか?というのは誰もが注目する所だけど、そこは流石のRADIOHEAD。ギターギャンギャンに決めてきた。浮遊感のある入りから、BメロのSing a song on the jukebox that goes(ここ合唱にならないの僕はちょっと不思議)で鳴り響くギター、そしてBurrrrrrn the wiiiiiiiiiiitchで一気に緊張感がパーンと弾けた時の鼓動の高鳴りといったら。改めて彼らは緻密な作品づくりが凄いだけではない、生粋のライブバンドなのだと確信。

ここから"Ful Stop"までの5曲は『A Moon Shaped Pool』から。この曲順は今ツアーを通してほぼすべてそうなのだけど、彼らの「どうだ!これが最新の俺達だ!ついてこれるか!」とでも言わんばかりの気迫が感じられた。おそらく今作を聴いて「あんまロックじゃねえな」と感じていた人は多いことであろう。しかし音源ではなりを潜めていたグルーヴ感や曲全体のダイナミズムが存分に発揮された演奏を観て、「これが現在進行形の彼らのロックか!」とゾクゾク。

新作から存分に披露した後(Ful Stopで切るのは洒落なのかなんなのか)は"2+2=5"。あの怪しげなイントロから徐々に高まっていく熱気がBecause!!で弾ける。You have not been paying attention! paying attention! paying attention! ジリジリ高めてパーンと爆発するのは"Creep"から続く彼らの技だけど、それが一番端的に示されているのがこの曲。会場の熱気は急上昇!

そしてまさかまさかの"Airbag"。いやイントロカッコよすぎだろ。かつて時代を貫いた重厚なギターアンサンブルは今現在もなお鳴り響いている。おお、これがRADIOHEADだ。続いて"Reckoner"。"No Surprises"や"Let Down"のような美メロが光る曲だけど、今までのリズム的冒険を踏まえたビートが核となる曲。こういう曲にのれるというのも変だけど何とものれる。美しい曲の流れが続く中で満を持して"Pyramid Song"。この曲はあえて何かを言う必要もない。ただただ美しい。全体を貫く一見不規則なリズムピアノから醸し出される荘厳な雰囲気が会場を包む。ああ、美しい。

今回の一番の驚きは"Bloom"をはじめとする前作『The King Of Limbs』からの曲の変貌具合。おそらく彼らのキャリアで一番とっつきづらくてよくわからんアルバムだけど、ライブでの爆発力、大化け具合は『Kid A』並みかそれ以上。彼らも前回のツアーを経て完全に身体に馴染んだのか、これでもかと叩きつけてくる音、音、音。なんだよあのジョニーのドラム。

流れはそのままに再び『A Moon Shaped Pool』から"Identikit""The Numbers"。音源で聴いていた限り抑揚があまりないノッペリした曲が多い印象だったけど、やはりライブで観るとジリジリ盛り上げていくダイナミズムがよく感じられる。ジョニーのギターが入るところの「満を持して来た」って感じの重みが単純なオルタナロック的「静→動」の構成とも違っていて面白い。

そして再び『The King Of Limbs』から"Feral"。音源ではそれほど意識しなかったことだけど、本作のリズムは複雑過ぎる。意味がわからない。のろうとしたら逆にのれないわけがわからんビートを刻んでいる。しかしながらその複雑怪奇なビートに身体を委ねていると不思議と身体が動く。本当に意味がわからない。そしてリズムの怪奇さといったら次の"Arppegi/Wired Fishes"も引けを取らない。何種類ものパターンの違うアルペジオから浮かび上がってくるビート。こんなビートの刻み方あるんかよ。

そして今回のハイライトと言ってもいい"Everything In Its Right Place"からの"Idioteque"。"Everything〜"といえば『Kid A』以降のRADIOHEADのライブにおいて最も重要な曲。かつては10分近い時間をかけて会場を染め上げていた彼らの真骨頂と言ってもいい曲だけど、今回は強引にも"Idioteque"への助走として使うという贅沢さ!ジリジリと高められてきた温度が"Idioteque"へと昇華された時のある意味爽やかな気分は忘れられない。それからは彼らのお家芸に身を任せるだけ。

興奮冷めやらぬ中本編の締めは"There There"。いや、このタイミングでステージ前方にタムが用意された時点で多分そうなんだろなとは思ったのだけど、やっぱこの曲はゾクゾクするね。『Kid A』『Amnesiac』を経てロックへの回帰を鳴らした曲(この曲のリフが超カッコいいのは意外と話題にならない)だけど、それでも「単純に回帰なんてするかよ」というダイナミックな曲。ドラムのフィルを中心に全体でリズムを刻む様は壮観です。最高の流れだ…

 

本編が終わってひと段落。しばらくして再登場したトムはアコギを持っていたので「このタイミングでアコギってなんだ?」と少し困惑していた中で始まったのは"Exit Music"。ここでこれかよ。なんてものを持ってくるんだ。しめやかに始まったアンコールですが、この曲が内包している熱量は彼らの楽曲の中でも随一。この流れはニクイぞRADIOHEAD

会場が張り詰めたエモーションに包まれたところであのキレのいいイントロが鳴り響く。"Bodysnatchers"だ。この曲もリフがカッコいい曲(というかよく弾きながら歌えんな)だけど、"There There"同様単純なギターロックとは言いがたい。ここで鳴らされているのは最新のギターロックのかたちなのだと改めて感じました。It is the 21st century!

次の"Separator"もまた衝撃的。ここで?アンコールのこのタイミングで?イントロが聞こえてきた時当惑したのは僕だけではないだろう。しかし一番ストレートにのれたのは他でもないこの曲。正直『The King Of Limbs』舐めてましたすいませんでした。

 心地よくなったところで待ってました"The National Anthem"!今回のもう1つのハイライトと言っていいだろう。ここぞとばかりにコリンのベースが唸りまくる。触れてなかったけど、今回のライブはステージライティングもとんでもなかった。前作のツアーからやっていたReptilia/The StrokesのPVみたいな分割画面に個々のメンバーが映される手法なのだけど、そこに曲毎に様々な色のイメージがビジュアライズ。この曲では鮮烈な赤の向こうにメンバーが映しだされ、もうほんとトリップしてしまいそうな気分。しかしこの切り札とも言える曲をアンコール最終盤に持ってくるのもニクイ。

そして再びアコギを持ち出し"Karma Police"。やっぱこの曲の叙情的な美しさに代わるものはない。ほろほろしながら合唱。名残惜しい。本当に名残惜しい。

 

2時間以上観たのにまだまだ物足りない圧巻のパフォーマンス。全体を通して見ても新作をベースとしつつ今までのディスコグラフィをそのステージまで引き上げ緻密に配置した完璧な構成だったと思う。帰りに例のシャトルバス事件に巻き込まれたり色々あったけどそんなことでは色褪せない素敵な体験をありがとう。

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(画像は拾い物で失礼)

 

 おぼろげながらかたちが見えてきた『A Moon Shaped Pool』

9時頃に起床し大阪から新幹線で東京に向かう。その過程で『A Moon Shaped Pool』を4周ほどじっくり聴いて思ったのだけど、僕は、僕らは、このアルバムを誤解していたのではないか。トムのソロ2枚目『Tomorrow's Modern Boxes』でもそうなのだが、どうもパッと聴いた印象での驚きが欠けていたように思っていた。RADIOHEADといえばいつだって音楽を極限まで追求した革新的なサウンドを用意してくるものなのだけど、今作はそういう意味では肩透かしを食らったというか「あれ?」って思っていた。それは正しかったのか?いや、まったくの間違いだった。前日のライブを経て聞こえてくる音は全く違うものだった。後で改めて実感することなのだが、いささか地味にも聴こえた本作は現在の彼らから世界への回答なのだ。東京への期待は否が応にも高まる。

 

8/21 東京編〜過去と現在の交錯〜

幕張会場マリンステージ。前日同様15分ほど押してはじまるRADIOHEAD(そもそもサカナクションの大掛かりなステージからあの時間でセットし直すのは無理な話では…)。しかしやはり"Burn The Witch" のはじまりは凄い。「え?はじまってんの?」と言ってしまいそうな緩やかになだれ込んでくる音楽を認識した頃には完全にRADIOHEADの空間に包み込まれているのだ。続く"Daydreaming"は一見ライブ2曲目としては静かすぎる曲にも思える。しかしこの曲も"Pyramid Song"や"Exit Music"のように内在されているパワーがある。会場を静かに緩やかに、それでも確実に温めるパワーがある。今思うとこの配置はかなり絶妙だ。

さらに 不穏な美しさが会場を包む"Decks Dark"、トラディッショナルな雰囲気漂う"Desert Island Disk"と続く。ここら辺はアンビエントな感触をバンド編成で創り出す最新の彼らのスタイルが遺憾なく現れている。余談だが、今回のツアーTシャツではdifferent types of love(Desert Island Disk)、why should I be good if you're not?(Ful Stop)、the future is inside us(The Numbers)と、彼らにしては珍しく歌詞を前面にフィーチャーしたデザインとなっていてびっくり。どれほど彼らの意向が入ってるのかはわからないが、歌詞に目を向けてくれという意志の表れであろうか?彼らの思惑通りかここらへんの言葉はトムが歌うのに合わせて口をついて出てきたものだ。

それにしても"Ful Stop"はタフな曲。ピリピリとした緊張感を極限まで張り詰めさせてから続く"2+2=5"の後半で一気に爆発させる大掛かりなスタイルには脱帽するしかない。それはそうと相当なレア曲のはずの"Airbag"をやってくれるのはやはり驚き。 田中宗一郎氏(the sign magazine)も言ってたけどRADIOHEADがそれだけ日本のことを特別に思ってくれてるという事実にとても嬉しくなる。続く "Reckoner"もある種ハイライトと言っていいかもしれない。途中パーカッションが止まった時の本当に時間が止まったような感覚は忘れられない。

そしてまさかの"No Surprises"RADIOHEADの美メロ曲といえばこの曲というほどの超有名曲なだけあって、会場もセンチメンタルな雰囲気に包まれ思い思いのシンガロング。もうとっくのとうに思ってるけど、改めてこの場にいられてよかったなあと思った。

さらにジョニーのドラムが荒々しい意味不明曲"Bloom"に続いて小気味いいビートが鳴り響く"Identikit"、ピアノとバンドが絡み合う"The Numbers"。やはり『A Moon Shaped Pool』からの曲で気になるのはストリングスパートをどう置き換えていくのかというところなだけど、"The Numbers"の後半のピアノとストリングスの掛け合い部分がギターに置き換えられていたのは、ぴったりはまりすぎてて爆笑してしまった笑 しかし一方でこれは引き算の美学というのだろうか。例えば後から思えばちょうどこのライブ当日リリースされたFrank Oceanの『Blonde』にも通ずるチルでアンビエントな感じ。彼らはそこにクラシカルなモチーフも取り入れ荘厳さを醸し出している。自分達の音楽を貫きつつも敏感に現行のトレンドに呼応する姿勢は流石だ。

そして『Hail To The Thief』からトムのフェイバリット(?)"The Gloaming"。アルバムの中では比較的地味な曲だけど、ライブでとっても輝く曲。前日の"Separator"もだけど、過去作からの曲はその当時タイムリーに響いた曲よりはキャリアを通して普遍的に響く曲が選ばれている感じがするのが印象的。お次はRADIOHEAD的キラーチューン"The National Anthem"。前日書いたから割愛するけど、この曲のテンションはヤバすぎるでしょ笑

続いてトムダンスが有名な"Lotus Flower"。前回のツアーよりも音圧抑えめで全体の流れに馴染むような音だったように思う。その分緊張感をつくって迎えたのは"Everything In Its Right Place"。待ってました。この流れはしばらく彼ら最大の武器になるのではないだろうか。この曲からの元祖トムダンス "Idioteque"での爆発力は凄い。セットリスト中の各所に見られる、何曲も使って会場の雰囲気を作っていくやり方は熟練の技を感じさせる。テンションを上げきったところで本編終了。

 

さて前日は"Exit Music"をここぞというタイミングで披露したアンコール1曲目。何から始まるのかと期待は高まりまくる中、聞こえてきたのはあのギターフレーズ。"Let Down"。冷静に観たいなーと思っていたがさすがに堪えきれずボロボロに噎び泣きながらシンガロング。センチメンタルになるなと言われても無理ってもんですわ。わりとグダグダした演奏だったけどそんなの関係ない。最後のフレーズyou'll know where you areが胸に沁みる。

そんなめちゃくちゃセンチメンタルになった流れで『A Moon Shaped Pool』から"Present Tense"。"True Love Waits"を別としたら新作で随一の美しいメロディを持つ曲なのでここで聴けてよかった。ジョニーちょっとうるせえなと思ったけどそこもご愛嬌。 エドやコリンのパーカッションも一見「いる意味あんの?」って感じなんだけど、あれのおかげで曲の広がりが生まれるんだよね。

お次は貫禄の"Nude"。コリンのベースやっぱカッコいい。RADIOHEADの中でも屈指の印象的な歌詞(don't get any big ideas they're not gonna happen / you'll go to hell for what your dirty mind is thinking)を持つこの曲だけど、シンガロングになるでもなくただただ聴き入っていた。

そしてここからはあまりよく覚えていない。アルペジオのイントロが鳴った時は一瞬"My Iron Lung"に聞こえて(それはそれで聴きたかったけど) 反応が遅れたのだけど、ついにきました"Creep"。会場が一番待ち望んでいたであろうこの曲が鳴り出してからはもう本当に現実なのか疑わしくなるような異様な雰囲気に包まれていた。シンガロングといえばDon't Look Back In Anger / Oasis(ピースフル!)やSeven Nation Army / The White Stripes(あのリフ合唱するの超楽しい)が印象的だったのだけど、この曲のシンガロングはどの曲とも全く違うかなり異様なもの。ピースフルとか幸せとか楽しいとかテンション上がるとか、そういう感じではなく、会場にいる誰もがこの曲に投影している自己像をトムのボーカルに、ジョニーのギターに、それぞれぶつけていた、そんなシンガロングだった。この経験はもう一生できないかもしれない。貴重な体験だったなあ。

 しかし一番の驚きは次の"Bodysnatchers"。正直"Creep"に関してはおそらくやるだろうと思っていたけど、やるなら最後だろうと思っていたので、まだ続きそうな雰囲気とトムが持ち出したSGを見て「まさか!まさか!!」と当惑しっぱなし。そしてあのイントロ。この瞬間の歓声はこの日一番だったのではないだろうか。僕は全身が脱力して腰を抜かしそうになってしまいっていた。そこからはまさに夢心地。なんてバンドなんだRADIOHEAD。"Creep"で終わってれば大団円でもなんだか予定調和な感じがあったのだけどそうはしない。流石だよ。

そして本当の締めは"Street Spirit"。2日通して『The Bends』からの唯一の選曲。この曲がはじまった瞬間誰もがこれが最後だと思ったのではないだろうか。"Karma Police"締めも最高だけど、思えば彼らのキャリアを通して『The Bends』の最後を飾るこの曲ほど最後に相応しい曲はない(他のアルバム最終曲は中盤でやるかまったく披露されていない)。この日の思い出を噛み締めるように魂を彼らへの愛で満たしながらしみじみと聴いていた。


演奏が終わった後、会場に花火が上がり堂々のフィナーレ!時間が微妙だったので写真を撮ってる人を横目にそそくさと会場を抜けたけど、去り際に耳をかすめたSEのStarman / David Bowieがとても印象深かったなあ。

多少チグハグしてたけど会場の雰囲気に合わせて柔軟に編成したセットリスト、もはや特別な曲ではなくなった"Creep"、そこに彼らから僕らへの愛を感じると同時に、本当に長い間活動してきたバンドなんだとしみじみ思ったよ。ありがとうRADIOHEAD

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つまるところ『A Moon Shaped Pool』とは

今回は過去の曲もかなりやったけど、やはり核となっていたのは『A Moon Shaped Pool』。正直いってしまうとまだ全貌がつかめた感じがしない。それは例えば何年後かにあるであろう次作のリリース時にやっと答え合わせができるような、そんな感じなのかもしれない。ただ、そんな中でもおぼろげながら感じたのだが、今回のアルバムはRADIOHEAD史上初めて、起承転結でいうところの「結」といえるアルバムだったんじゃないだろうか。きっと前回までのツアーで同じように過去の曲を沢山やっても今回よりずっとチグハグしていたことだと思う。

過去に立ち返ろうという意志は、例えば「ジュークボックスに合わせて歌え(Burn The Witch)」「もう僕に飽きたならどうぞ楽しい時間を(Decks Dark)」「僕を戻してくれ(Ful Stop)」等、歌詞の中にもなかば皮肉めいた表現であらわされているように思う(和訳は日本盤 中村明美氏)。皮肉、正直過去の曲をやり過ぎるのは革新を続けてきた彼らを観るにあたって必ずしも嬉しいことばかりではなかったりもする。

でも今回のライブは粉川しの氏(ロッキンオン)も言っていたように『Kid A』以降とかそんな区切りがなくなった、キャリアすべてを包括したライブだったように思える。それができたのはやはり『A Moon Shaped Pool』がさりげなくも確実にキャリア全体を包み込んだ快作だったからと言えるだろう。

 そういう意味で、今回のライブは『A Moon Shaped Pool』の意義を世界に問いかける極めて大きな実験の場だったともいえる。それはもしかしたら必ずしも身を結んではいないかもしれない。RADIOHEADのファン層はなかなか特殊で、死ぬほど好きな人ととりあえず聴いている人の比率が他のバンドと大きく違うような気がして、今回はフェスなことも相まってとりあえず聴いてる層が大好き層を越えてくる過渡期だったといえる(Twitterで「これだけ熱狂しても誰とも感情を共有しないところが稀有なところでありそれ故に世界中で愛されてる」みたいに書いたけど、単純にノリが違ったという部分も否定できない)。

それは少し寂しい事実ではあるけど、僕を含め多くのファンにはちゃんと届いたはず。彼らもそれはわかってるんじゃないだろうか。そういうのも織り込み済みで「今現在のRADIOHEAD」はこういう感じなんだと僕らも彼らも納得できた場だったかと思う。むしろ今回もとんでもなかったのに次の機会がどういうものになるのか楽しみで仕方がない笑 あ、個々人としてのライブ体験を否定したいのではないのでご安心を。これあんま言及したくなかったけど思ってる人絶対一定数いるから一応。

まあ「結」とは言ったものの彼らがこれからどこに向かっていくのかは誰にもわからない。もしかしたらこれは新たな「起」なのかもしれない。今後の彼らに思いを馳せつつ、この文章の締めといたしましょう。

 

大阪と東京

少し追記。2日間を通してかたちの違ったセットリストを披露してくれたRADIOHEAD。大阪のみ観た人の「Creep聴きたかったー!」という声をかなり聞いたけど、大阪が劣ったものかといったら全然そんなことはなく、むしろ完成度で言えば大阪のほうが上だったと思うのでご安心を。というか悔しさがあるのはそれでいいと思う。両会場行った僕ですら「あれも聴きたかった!」って曲は挙げだしたらキリがないし、「大満足だった!これで十分!」ってなってもつまらないでしょ?

 この悔しさは彼らから僕達への最後のプレゼントなのだと思う。こんだけセトリ変えるのを追っかけて世界中周ってもいいし、また来る時に思いを馳せてもいいし、どうするかはit's up to you。彼らはそういうことが言いたいんだと思う。だから何年後かにまた会場で会おうぜ。楽しみにしてる!では!

DÉ DÉ MOUSE "be yourself" release oneman tour @京都メトロ

いやー、最高やったね!いろいろ書くの蛇足な気もするけど楽しかった思い出をつらつらと。

 


雨の鴨川 to メトロ

2日前に存在を知ったこの公演。金曜夜に京都メトロでDÉ DÉ MOUSEのバンドセットワンマン… 最高じゃねえか… 秒でチケットをとる。わくわく、わくわく。

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当日はあいにくの雨だったけど雨の鴨川もいい感じ。

メトロ着いたら早速目に飛び込んできたbe yourselfのジャケ。このジャケめっちゃ好きなんよなあ。ポケモンとかのデザインしてる人の作品らしく、鮮烈でキャッチーなんだけど変に煽情的にならないのがDÉ DÉ MOUSEのイメージとマッチしててとってもいい。

 

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そして来るの3回目だけどやっぱり京都メトロ大好きだ!地下鉄と地上の間っていうここしかない外観もザ!クラブ!って感じの猥雑な雰囲気も僕の中で理想のパーティ空間だ。ここでDÉ DÉ MOUSE… わくわく。

 


いよいよ!be yourself!

ウイスキーを飲んでいい具合に期待感が温まったところでいよいよDÉ DÉ MOUSEが登場。今回は彼のトラックとキーボードにバンドセットの3人を加えた贅沢な編成だ。

さっそくはじめるのかと思ったら「京都の人ー!大阪の人ー!あ!神戸の人ー!あと、、」と近隣の県から来たオーディエンスに声をかける。岡山の人とかいるのか?いやいるだろうな、そんくらい期待感が高まってる。しっかしゆるい人やなあ。場を和ますためとか自分で言うなよ笑 まあ思惑通り場も和んだところでいよいよスタート(ところで和歌山言ったっけ?笑)。

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いや、凄い… 正直彼1人のビートだけで十二分に踊れるくらいなのに、キックの音がズンズンとのってきて音の圧が身体を揺らす!バリバリのスラップベースと小気味のいいカッティングギターも音像に厚みをもたらしててめっちゃ分厚い!そしてレーザー6台を駆使した鮮烈なライティングが嫌が応にも感情を刺激する。エモい… エモ過ぎる…

畳み掛けるように新作『be yourself』から次々と披露、そしてそのたびに湧き上がる歓声。前作『dream you up』では今までのエキゾチックでどこかインテリジェントなイメージから、王道のEDM的マナーにのっとった素直な"楽しさ"に振り切れてきたDÉ DÉ MOUSE。今作ではその路線はそのままにお家芸であるカットアップされたヴォーカルを全面的にフィーチャーしている。


この歌ともいえない声がまた感情を掻き立てる。声を介した超言語的コミュニケーションとでも言おうか。断片的な言葉が彼の身振り手振りとハミングを通して"歌メロ"とか"フレーズ"と認識される前に潜在意識にダイレクトにぶつかってくる。彼のハミングも多分歌ってるわけではないが、僕もわけもわからず声にならない声が出てくる。多分普通の"歌"ではこうはできない。これがDÉ DÉ MOUSEだ。

 

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途中冗談なのかなんなのか「去年『dream you up』でデビューして今年2ndアルバム『be yourself』をリリースして…」などと言っていたが、それがあながち冗談にも聞こえないくらいアップデートされた新生DÉ DÉ MOUSE。「次が最後の曲です」と言われた時お世辞ではなく本心から出る「えーっ!?」という声。もうそんなにたったの?はやすぎる…


そんなこんなで本編最後は表題曲be yourself。「僕が最高なことをするだけ」という彼の言葉通り、圧力からも形式からも解放されたそれぞれが自分らしく叫び手を振り上げ踊りまくった最高の時間。アンコールではお馴染みの「DJ!」から1曲だけ披露されたが本当にこの時間が終わってしまうことが名残惜しい… 名残惜し過ぎる… それはまるで一瞬で過ぎ去ったこの夏のようだった。いやー、最高でした…!

 

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音楽って最高…!

汗をかき過ぎたので着替えがてらグッズTを買いに行くと本人が気さくにファンと話してる。「最高でした!!」「うん!僕もそうだったと思う!」 この謙遜しない感じいいなあ… 本当に最高でした!ありがとう!音楽って最高に楽しいなあ…!


そしてこの公演は9/14に渋谷O-EASTでも。こんな最高な夜はそうそうないよ。まだ聴いてない人は『be yourself』を聴いて、魅了されたらチケットをとろう!今すぐ!

Sonicmania & Summer Sonic 大阪1日目の感想をだらっと

今回はSonicmaniaSummer Sonic大阪1日目に参加!超特急で過ぎ去ってしまったけど忘れないうちにつらつらと。

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Sonicmania

 

 elrowステージ。めっちゃいい雰囲気!

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Cornelius (途中まで)
elrowステージでウォーミングアップを済ましてから、去年の単独行公演振りのCornelius。演奏と同期した鮮烈なビジュアルイメージとともに繰り出される不可思議な刻みかたをする演奏はのりかたなんてわからなくても集中して身を委ねてると身体が反応を示して動きだす。和製なんちゃらって言い方は好きじゃないけど誰かを和製Radioheadと呼ぶならやっぱり僕はCorneliusをそう呼びたいな。ただただクールだけどアツくなれるステージだったし、多種多様なノリが見られて楽しかったなあ。

Dorian Concept
泣く泣くCorneliusを抜けて観にきたDorian Conceptはとっても変幻自在なプレイ。クラシックみたいなアンビエントに胸を打たれてたかと思えばイケてるビートが響いてきて唸らされる。と思ったらブリブリな音が乗ってきてファミコンみたいなSEに意表を突かれたり。次に何がくるか全く予想がつかないわくわくどきどきの30分間でした。

Nine Inch Nails
あの豪雨のサマソニから9年振りに観るNIN(伝説の'13フジも観たかった!)。控えめに言って圧倒的カリスマ、神という表現もトレントレズナーを評するならあながち間違っていないのではないか。マイクスタンドに体重をかけながら魂の底から歌う姿がこれほど絵になる人は他には誰もいない。ドキュメンタリーみたいなモノクロのライブ映像も相まってまるで僕ら全員が伝説の真っ只中にいるような気分になったし、WishGave Upみたいなハードコアな曲はもちろんのこと、PiggyCloserみたいなミドルテンポの曲でもバンドがバッキバキに決めてくるから内面からふつふつとテンションが上がったよね。あとハンドクラップ求めまくったりPiggyで客席に入ったり、クールなイメージだったけど意外とお茶目な感じもしてよかった。もう完全に自分の曲だろってくらいハマってたI'm Afraid Of Americans / David Bowieのカバーも最高だったし、なんといってもハイライトは一番最後のHurt。一瞬やらないのかと思ったところに"I…… hurt myself today…"の歌いだしが聞こえてきた時は鳥肌がたったしボロボロ泣いてしまった。屋内だけど暴風雨みたいな異様な高揚感が詰まったステージで、もうこれで終わりでもいいと思うくらい最高のステージだった!

My Bloody Valentine
いやいや終わっちゃダメだ!ど深夜でNINのあとのふらふら状態、ウイスキー片手っていう最高のシチュエーションの中現れたのは今夜の目玉My Bloody Valentine!僕にとっては念願の初マイブラなのでどんなライブになるかめちゃくちゃ楽しみだ!そんなふうに思いながら初っ端の出音。で、でかい… 噂に聞いてた通りだ… でも意外といけるかなと思って耳栓を外してみるものの、しばらくして酩酊状態になってきたのでもう一度装着。ギターの音にかき消されてほとんど歌が聞こえないくらいだけどシューゲイズの本質はダンスミュージック。こちらも負けじとこれでもかとでかいドラムの音に合わせて身体が動く動く。サイケって概念を煮詰めて抽出したようなビジュアルイメージとそれをライブに重ねたサイドモニターの映像も相まってどんどん現実感が薄れていって、夢の中のような幻想的な空間の中ただただ揺られていた。正直現実感がなさすぎて細かいことはほとんど何も覚えてないけど、You Made Me Reariseのノイズピットに身を委ねてる中口をついて出てきた「美しい…」を自分でもよく覚えてる。やはり原点にして頂点。音源の一億倍凄い。残ってたもの全部根こそぎ持ってかれて精根尽き果てたけどそれも含めて今思い返すと最高の体験だった!あー、また観たい。こりゃあ中毒になるわ…

Ross From Friends
マイブラに持ってかれすぎて楽しみにしてたPetit Biscuitもわざわざ3Dメガネを持参したFlying Lotusもすっ飛ばしてしまってこの日の締めはこの人。とはいえ全然動けないので座りながらボーッと眺めていました。前の踊ってる人達元気だなあ… このFour Tetにも通じるような没入感と陶酔感を味わえるストイックなプレイはぜひぜひまたじっくり観たい。単独来てください!あ、もっと体力つけます…笑 フラッフラになりながら新幹線へ向かう…

 

みんな戦友…!

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Summer Sonic Osaka Day 1

Knox Fortune (途中から)
寝てなくてフラフラだったけど、なんとか間に合ったのでこの日は楽しみにしてたこのバンドから。チルい雰囲気かと思いきや、この日の暑さにも負けない陽気でアツいパフォーマンスで最初なのにもう汗ダラダラ笑 チャノのカバーだったりいい感じにヘタウマっぽいパンクナンバーだったり、一発目にふさわしい楽しいライブでした!

Rex Orange County
午後のソニックステージに現れたのは初めて日本に来てくれた期待の新星。伸びやかに間をとる独特のタイム感から繰り出されるのは、とっても爽やかでJ-POP育ちの僕らの胸もキュンとする甘酸っぱくてどっかノスタルジックな曲達。ギターロックに熱狂してた僕らもグッとくるようなギター使いに、ピアノ、ラップまで織り交ぜたステージはまったく気負いがなく肩の力が抜けた感じでオシャレというかもう洒脱というしかない!それでいてMCはなんか小慣れてなくて若々しい感じだったのも好感度高いなあ。目を閉じたら明るい光が入ってくる気持ちのいい休日の午後、これはもう隠れたベストアクトと言ってもいいかも。

Tom Misch
実はアルバムはそれほどピンときてなかったので上階で座りながら観ていたのだけど、意外とストイックにキメるスタイルを見てアリーナへ。アダルティ(お前何歳だよ)でしっとりした曲からキメるとこはビシッと決めてすごくいいステージだったなあ。

Jorja Smith (途中から)
ちょっと外で腹ごしらえをしてからまた中へ。いやー、えっちい見た目にも目が行きがちだけどやっぱ貫禄の歌姫だね。バンド演奏もゴリゴリ攻めてきたし胸が熱くなるステージでした。それと、この次のチャノまでみんな初めて日本に来たと言ってたけど、ここらへんの世界で盛り上がってるアクトを揃えるサマソニの慧眼に驚かされるばかりですね…

Chance The Rapper
ついに来た!待ち望んでたチャノがついに大阪オーシャンステージに現れた!動きひとつひとつがとってもチャーミングでラップもキレッキレだし、バックの人達はてきとーな寄せ集め感すらあるリラックスした雰囲気ながらもガンガン飛ばしてくるし最高にかっこいい!そしてリリックはそれほどわかってるわけじゃなくても、本当に真に迫ってくる歌唱でもっともっとちゃんと理解したいなと思いました。No Problemでは文句なしにぶち上がったし(ドラムがやばかった!)、最後のSame DrugsBlessings (Reprise)は僕ら一人一人に語りかけてくるようで、太陽が昇って沈む映像も相まってとても感動的だったなあ。最高のポップスターだけどまるで友人のように僕らに寄り添って一緒に楽しんだチャノのライブ、自分自身としては彼の気合いにちゃんと応えきれたかなって若干の悔いがあるけど、そんなのなんも関係ないくらい祝福に包まれた最高の時間でした。また日本で会おう。もっともっと僕も頑張ります!そして追記になるのだけど、東京公演を観たみんなのツイートが楽しかったで溢れてたのを見てうるうるきてしまった。Same Drugsの大合唱、嬉しそうに涙ぐむチャノ、国境も国籍も時間も場所も越える音楽の力を目の当たりにしてぼろぼろ泣いてしまったよ。みんなもチャノも最高だ…!!

 

チャノが指差した綺麗な夕焼け

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Beck
最高のCOAST公演から9ヶ月、Beckが大阪にやってきた!初っ端Devil's Haircutのギターをぎゃーんと鳴らす感じは前日観た盟友Corneliusとだぶって見えたし、そこからまさかのLoserでテンション上がりっぱなし!それからも新旧交えた名曲のオンパレードで、もうこのステージが1つのパッケージとして完成されてたよなあ。I'm So FreeではCOAST公演の熱狂的な縦ノリをよっぽど気に入ってくれてたのか「好きなように跳ねて楽しんでなー」みたいなことキラッキラした顔で言っててめっちゃかわいかったし僕もめっちゃ嬉しくなって跳ね回ってた!最初なんの曲かよくわからない入り方する演出もよかったしビジュアルも色とりどりサイケな感じでこれまたテンション上がったよね。まさにショーマンシップの塊と言う以外ないしやっぱこの人はスタジアム級のアーティストだって自ら証明してくれた最高のステージでした!

Paramore (途中から)
Beck終わって急いだら最後のほうに間に合ったのでちょっとだけ。ほとんど知らないけど会場の熱狂的な雰囲気が伝わってきてさすがキャリアあるバンドだなって思いました。でも最高のポップチューンHard Timesでみんなと盛り上がれたのはもう最高の締めって感じだったし大満足で帰路に… 楽しかったなあ。

 

しぇからしかで締め!

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いやー、本当にあっという間に夏が過ぎたね!皆さんお疲れ様でした!今後も単独とか行ったらこんな風に書いてくのでまたよろしくでーす!

FUJI ROCK FESTIVAL '18の雑感をだらっと

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久々の更新!

今回のフジロックは1日目は配信で観て後2日参加!でもめっちゃ濃かったなあ… 忘れないうちにその感想をだらだら書いていきます。

 

Day 1 (配信で)

MONGOL800 / neco眠る / ミツメ / Let's Eat Grandma / Perquet Courts / Albert Hammond Jr. / Tune-Yards / サカナクション / Mac DeMarco / ODESZA / N.E.R.D

初日はパッキングしながら配信で。誰しもの青春MONGOL800(配信なかったらみなかっただろうからありがたい)や、みんながベストに上げるのもよくわかる貫禄のステージをみせてくれたTune-Yards、考え尽くされたセトリでグリーン準トリを見事につとめ上げたサカナクション、そして幸せにあふれたこの夜のハイライトODESZA等、配信みてたら余計に現地に行きたくなるアクトばかりで笑 来年はなんも考えず早割とろう。でも現地行ってからも配信みてる勢のツイートも流れてきてわちゃわちゃしてたのめっちゃ面白かったしやっぱこの試みはいいなって思った。来年も期待!

 


Day 2

The Birthday (一瞬)

苗場に着いて一発目、数年振りにみたチバユウスケは羨ましいくらい渋いおっさんになってたなあ。近年いかに洋楽ばっか聴いててもやっぱ思い出深いバンドだし、グリーンのこの時間帯に配置してくれたフジロックに拍手!!

 


小袋成彬

彼の『分離派の夏』は冒頭の川端康成がどうとかいう朗読でうへーってなったりしていまいち馴染みきれなかったものの、印象に残る曲も多かったのでライブはかなり期待してて。そして「この後宿帰って寝るのかな?」ってくらい普段着みたいな格好で現れた彼のライブはとてもシンプルな構成ながら圧倒的な歌唱。いちいち耳と心に引っかかってくるしやっぱトラック単体の力が傑出してるなって思った。中盤の若者のすべて / フジファブリックのカバーは虚を突かれてコンタクトひとつ無駄にしちゃったけど、こんなセンセーショナルな選曲なのに全く違和感なく馴染んでて絶妙な選曲するなあって。改めて聴こう『分離派の夏』。 

 


Johnny Marr (一瞬)

スミスはこの世で一番級に好きなんだけど恥ずかしながらマーソロは全然知らなかったので今回初体験。でもやっぱり苗場のグリーンステージが似合うスケールのでかい王道ロックで流石やなって思った。惜しむらくはSuperorganism待機で早めに抜けてスミスの2曲を観られなかったこと(次の日の早朝配信でみました笑)だけどまたどっかで会おうな兄貴!!

 


Superorganism

直前のインタビューから察してたけどオロノは(明らかにわざと)カタコト日本語だったり、ファックファック言いまくってたり、フジの環境でもどうしても取り巻く"ティーンの日本人女子がなにか物珍しいことやってるぞ"っていう色眼鏡(さらに広く言えば日本社会に根深く存在する差別意識)に真っ向から立ち向かっていて本当にかっこよかったな。普通にやればピースフルで終わりそうなゆるいポップのステージであんな攻撃的なパフォーマンスをするアンバランスがめちゃくちゃ印象に残ってるし終わった今になってもなんだか考えさせられてしまう。メンバー誰をとっても一筋縄ではいかない超個性派集団はまさにSuperorganismの名にふさわしいバンドだったし来年また単独行けるのが楽しみで仕方がない!

 


Skrillex (途中まで)

MGMTが観たかったのでこの踊らせバカヤロウはほとんど観られなかったけど、それだけの時間でもめちゃくちゃテンションあがったなあ!グリーンの後方までビートがガンガンぶち当たってきて、僕も周りの人達も踊りっぱなし。YOSHIKIもみたかったけど、逆にそんなん観たらどうなっちゃってたか想像もつかないのでこれで十分笑 大満足でしたわ!

 


MGMT

案外簡単に入れてまずは一安心。Time To PretendElectric Feelみたいな初期のキラーチューンは勿論だけど、新作からのLittle Dark AgeWhen You DieMe And Michaelも最高に盛り上がってたしあの無敵だった僕たちのMGMTが帰ってきたって気持ちだったよ。それでもやっぱりハイライトはKids。半狂乱でリフを叫びながら知らない人達とハイタッチしたり、この時の僕らは完全優勝だったと言わざるを得ない…!単独も来ないかなあ!

 


Kendrick Lamar

さて世界が注目するこの夜の主役が登場。どんな感じになるんだろうという期待と不安が入り混じった緊張感の中、初っ端DNA.でいきなりぶち上がる!それからは映像や踊りも交えながら一瞬一瞬期待を上回り続ける鮮烈なパフォーマンスで不安なんか何処へやら。全然歌わせない日本人フレンドリーな感じだったけど、そんなの関係なく歌って踊ってみんなで楽しんでたなー。AlrightとかHUMBLE.なんて周りの兄さん達と拳を突き合わせたりしてクラブのピークタイムみたいだったし持参したお酒も全部飲み干しちゃうくらい最高潮!!でもアンコールのAll The Stars(=苗場に集まった全員)でスマホのライトをつけて踊ったことは絶対忘れられないしこの夜のハイライト。もう「ヒップホップよくわからん」とかなんも関係ないよな。ジャンルを超越した世界最高のステージだったし今後もずっと語り継がれていくことは間違いない。そしてこの大成功で今後の日本のライブ事情にも希望の光が射したような気持ちにもなるし、ほんとあらゆる意味で意義深い最高のステージでした!

 


Day 3

Western Caravan (途中まで)

今回唯一のヘブンで寝っ転がりながらだらだらと。モヒート飲んでカレー食べて極上のバンド演奏に身を包まれるこの時間、めっちゃ幸せだったなあ…

 


Suchmos (一瞬)

通りがかっただけなのでI Love Football(なんやねんそれ笑)とその前の曲しか観てないけど、フェス媚びしないストイックなセトリですげえなって思った。もっとも彼らに関してはそのあとのSNSの盛り上がりが面白かったけども笑 今後も同行が気になるバンドっすね!

 


Hinds (途中まで)

サービス精神旺盛すぎだろあんたら!笑 ハッピーなゆるポップでみんなニコニコ、MCの「オドリタイ!」とか言葉選びも超キュート。アンダーソン行きたくて早めに抜けたけどすごく満足感のあるステージでした!余談だけどtwitterで他の出演者アカウントにビール飲もうぜって送りまくってたの今回一番笑ったかもしれない笑笑 かわいすぎかよ!

 


Anderson .Paak & The Free Nationals

めっちゃテンション高いステージだったねー!1曲目Come Downから一瞬で最高潮に持ってきて、終盤はドラムとヒップホップの二刀流。ステージを所狭しと踊り倒す彼の姿を見たら負けてらんねえなってこっちも最高に気分上がったよな。僕の今年ベストソング'Til It's Overではサビ入りの敬礼みたいなポーズ→プチョヘンザ!→怒涛のドラムタイムがドラマチック過ぎてもう言葉を失ってしまった…!今年一番暑い夏がこのステージにあったな!!

 


Jack Johnson (一瞬)

彼のこと全然詳しくなくて3曲くらい観ただけだけどあのピアノの人ジャックを喰うくらい目立ってたよね笑 ゲスト? でもこの時間帯ディラン前ってのが本当にぴったりな気持ちいいステージでした。

 


serpentwithfeet

今回一番楽しみにしてたアクトだけど入りの少なさがちょっと残念やったな。彼を媒介として降りてきた何か神聖なものは時折悪魔にも変わって彼の一挙手一投足から目が離せなかったよ。祈るような手つきでいいちこカップを握り締めてたし、あのお茶目な感じのMCがなければどっか別の世界に連れてかれてしまうところだった。かなりはやく終わってしまったのも心残りだけど、これに懲りずまた単独でも来てほしいな。絶対行くから!!

 


Bob Dylan & His Band

そろそろ空も暮れようかという時間に現れた真打ちはMCも派手な演出もなくただ歌って演奏するだけ。究極にシンプルなステージだけど歌も演奏も極限まで突き詰められた最上級のクオリティと圧倒的な説得力。年季の入ったファンでも「なんだこの曲?」ってなるくらい今現在にアップデートされた曲達は知ってるか知らないかなんて何も関係ない。苗場史上最も老若男女入り混じったグリーンステージは、熱狂する人やただただ喜びを噛みしめる人、とりあえず観てる人から果ては寝てる人まで本当にみんな想い想いの過ごし方をしている。自由を象徴するディランの歌声に包まれた夕暮れ時の苗場はまさにフジロックが培ってきた自由の精神を体現しているような、そんな空間だった。ほんとディランの前に立たされたら全員同じだなーっていう、バラバラながらもある種の一体感を感じながら気持ちいい風に吹かれてしみじみと眺めていました。苗場20周年にふさわしい伝説の夜、みんなはどう過ごしてた?

 


本日休演 (一瞬)

ceroもダープロも行くのしんどそうだったのでかねてから気になってた京都のバンド本日休演を観に苗場食堂へ。この時間ここにいる人達ってかなりの玄人揃いだと思うけど、ディランのすぐ後っていう責任重大な位置にも物怖じしない楽しいステージでみんな盛り上がってたなあ。京都でもまた観に行こう。

 


Vampire Weekend

苗場に帰ってきたインディーロックの絶対王者は最初から最後まで楽しいを突き詰めたようなステージで終始笑顔で手を振ってたなあ。やっぱエズラの奇想天外だけどキャッチーでクセになるメロディはたまらないや。一番好きなStepの時我慢できなくてトイレに向かってたんだけど、道行く人達と手を振り交わして踊りながら歩いてたのがこの夜のハイライトかもしれない。カバーにしてもCape Cod Kwassa KwassaジャムセッションからのピースフルなHere Comes The Sunに、超ストイックに会場を温めたNew Dorp. New York / SBTRKT、そしてHAIMのダニエルを迎えた全インディーキッズを殺しにかかるThe Boys Are Back in Town / Thin Lizzyとにっくいにっくい選曲だったしフジロック史上一番じゃないかってくらい綺麗な月も相まって文句のつけようのない120点のステージだったね。必ず出すよって言ってくれた新作を携えての単独来日超待望!エイ!エイ!エイ!エイ!

 


Chvrches (途中から)

VW終わりでゆったり向かって最後方で観てたけど、みんなChvrchesが大好きなこと、そしてChvrchesが日本のみんな大好きなことが伝わってきてすっごく幸せな時間だったね。ファンの方が用意した国旗を楽しそうに振り回すローレンをみてたら、これはファン冥利に尽きるだろうなあって僕もしみじみとなりました。大団円にふさわしいさいっこうに楽しい空間だった!

 


菊地成孔(DJ) feat. Spank Happy / CHAI /Chip Tanaka / SUGIURUMN plays Madchester & Acid House Classics

夜は何を観るでもなくゆるっとだらっと、一度荷物を取りに帰るなどもしつつ自由に過ごしてました。フジでの夜遊びはじめてだったんだけど、この空間は素晴らしいな… 僕が求めているものすべてがここにはあったしここでのエピソードは書き出したらきりがない… 来年はもっと夜遊びしたいって心から思った。また来年ここでテキトーに乾杯しようぜみんな!

 

いやー、今回ほんま最高に楽しかったな!一緒に行ったメンバーも初めての宿も最高だったし今までで最高のフジロックだったと思う。現地で関わってくれたみんな、本当にありがとう!また来年苗場で!

 

今回感想書いてみて改めて文章書くの好きだなあと思ったので、ライブ行く時とか定期的に書いていこうと思います。マメじゃないのでちゃんと続くかわからんけど、よかったらまたよろしくお願いします!とりあえず次はソニマニ→サマソニかな!

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和訳と考察 Creep / Radiohead

www.youtube.com

狂乱のサマソニ2016。

youtu.be

When you were here before
Couldn't look you in the eye
You're just like an angel
Your skin makes me cry
君といた頃
目も合わせられなかった
君は天使のよう
その肌には涙が出るよ

You float like a feather
In a beautiful world
And I wish I was special
You're so fuckin' special
美しい世界を羽のように舞う君
僕は特別でありたかった
君は本当に特別な人だ

But I'm a creep, I'm a weirdo.
What the hell am I doing here?
I don't belong here.
でも僕は嫌な奴
周りと違った変な奴
こんなところで何をしているんだ
ここは僕の居場所じゃないのに

I don't care if it hurts
I want to have control
I want a perfect body
I want a perfect soul
傷ついたって構わない
自分をコントロールしたい
完全な身体が欲しい
完全な魂が欲しい

I want you to notice
When I'm not around
You're so fuckin' special
I wish I was special
気づいてほしい 僕がそこにいなくても
君は本当に特別な人だ
僕もそうありたかった

But I'm a creep, I'm a weirdo.
What the hell am I doing here?
I don't belong here.
でも僕は嫌な奴
周りと違った変な奴
こんなところで何をしているんだ
ここは僕の居場所じゃないのに

She's running out again,
She's running out
She's run run run run
彼女は再び僕の元を去っていってしまう

Whatever makes you happy
Whatever you want
You're so fuckin' special
I wish I was special
何が君に幸せをもたらし
君が何を望もうとも
君は本当に特別な人だ
僕もそうありたかった

But I'm a creep, I'm a weirdo,
What the hell am I doing here?
I don't belong here.
I don't belong here.
でも僕は嫌な奴
周りと違った変な奴
こんなところで何をしているんだ
ここは僕の居場所じゃないのに
ここは僕の居場所じゃないのに

 

はっきり言ってこの曲に自己投影なんかしてる奴はゴミ野郎だ。ただの陰キャラの被害妄想じゃねえか。

目すら合わせられないくせに、歯が浮くような言葉で特別特別とわめきたてたって一生伝わんねえよ。伝える度胸もないんだろうけど。

嫌な奴?そうだろうよ。お前が1番分かってるだろ。お前は不幸を嘆いてそんな自分がかわいそうかわいそうなんてやってる嫌な奴だよ。

ろくに傷ついたこともないくせになりたいなりたいばっかのワナビーちゃん。実際お前は何をしてきたんだよ。相も変わらず「君は特別」。そこいらにしとけよ。

はいはい嫌な奴嫌な奴。それに気づいてるだけマシってか?無理言うなよ。

去ってしまう?当たり前だろ。そもそもろくに接してもいないくせに去るもくそもあるかよ。

はいはい。お前は最低の人間だし、特別な「君」とは一生交わることはない。かわいそうな奴だな。なぐさめてほしい?ん?

 

まあこんな風にただのクズの歌だ。どうしようもない。


ただ、この曲に世界で1番自己投影しているのは僕だ。書いてて泣けてきたんだよ。そしてあなたもそう思っているだろう。「自分以上にこの曲に思い入れがある人間はいない」って。

この曲が今現在も特別な響きを持っている理由はまさにここにあると思う。誰しもが抱えている弱さ、醜い部分、そんなものはそうそう人に見せられない。普段はひた隠しにしている。たとえ心底信頼できる人がいたとしても完全に曝け出すのは困難だし、ましてや孤独を感じている人間なら尚更だ。

でもこの曲を聴くと否応なくそんな自分と向き合わされてしまう。そこで生まれてくる感情はもしかしたらこの曲で歌われているようなくだらない自己憐憫の上塗りかもしれないが、こんなにもダイレクトに届く言葉は彼らのレパートリーにも他にはない。

あんなにヒットした曲なのに彼ら自身あまり歌わないのは、ヒットしすぎたから〜とか今の音楽性とは〜とかではなく、こんな理由もあるんだろう。演奏している自分に対して「なんだこのクソ野郎は?」なんて思いたくもない。彼らも僕と、僕らと何も変わりはしないのだろう。

 

話は変わるがNIRVANAの"Smells Like Teen Spirit"やBECKの"Loser"と並んで90年代の(自虐的)名曲と言われているこの曲。"Smells〜"がダウナーで怒りにも似た雰囲気があったり、"Loser"が諦めにも似たやけっぱちな感じがあったりするのに対し、この曲はどこまでもエモーショナル。トムの悲痛なボーカル、美しくも物悲しいメロディ、感情をかき乱すジョニーの轟音ギター(ガガッ!ガガッ!)がこの歌詞と一体になって襲いかかってくる感覚はいまだ唯一無二だ。現在も世界最大級のバンドであるRADIOHEADだが、この曲を歌ったバンドが世界最大級になったのが凄いのか、世界最大級のバンドがこの曲を歌うのが凄いのかはわからないが、そういった点もこの曲の特別性を高めているのだと思う。

 

自分自身のことが100%好きな人にはこの曲は響かないだろう。でもそんな人間いるだろうか? もしかしたらある日響かなくなるかもしれない。でも、僕らが苦々しく難しい(故に素晴らしい)日々の営みを続けている限り、この曲は僕らのアンセムとして響き続けるだろう。

 

繰り返し書くが、この曲に自己投影している人はただのゴミ野郎だ。でもそれはそこらにいる普通の人間だ。

 

和訳と考察 You're Beautiful / James Blunt

youtu.be

 

My life is brilliant
僕の人生は素晴らしい

My life is brilliant
My love is pure
I saw an angel
Of that I'm sure
She smiled at me on the subway
She was with another man
But I won't lose no sleep on that
'Cause I've got a plan
僕の人生は素晴らしく
僕の愛は純粋だ
天使を見たんだ
間違いないよ
地下鉄で僕に微笑みかけた
誰か他の男と一緒だったけど
そんなことは気にしない
僕にはいい考えがあるんだ

You're beautiful
You're beautiful
You're beautiful, it's true
I saw your face in a crowded place
And I don't know what to do
'Cause I'll never be with you
君はきれいだ 君はきれい
君はきれいだよ 本当に
人ごみの中で君を見たんだ
どうしたらいいのかわからない
君と一緒になることはないんだから

Yes, she caught my eye
As we walked on by
She could see from my face that I was
Flyin' high
And I don't think that I'll see her again
But we shared a moment that will last till the end
そう 彼女に僕の目は奪われた
すれ違っただけだったのに
僕の表情から彼女は
僕がかなり興奮してるのがわかっただろうね
もう会うことはないんだろうけど
忘れられない瞬間だったね

You're beautiful
You're beautiful
You're beautiful, it's true
I saw your face in a crowded place
And I don't know what to do
'Cause I'll never be with you
君はきれいだ 君はきれい
君はきれいだよ 本当に
人ごみの中で君を見たんだ
どうしたらいいのかわからない
君と一緒になることはないんだから

You're beautiful
You're beautiful
You're beautiful, it's true
There must be an angel with a smile on her face
When she thought up that I should be with you
But it's time to face the truth
I will never be with you
君はきれいだ 君はきれい
君はきれいだよ 本当に
あの笑顔は天使に違いない
君も僕と一緒にいたいと考えてくれたなら
でも真実と向き合おう
君と一緒になることはない

 

単語
Brilliant:[形容詞]優秀な、鮮やかな、輝かしい、素晴らしい
won’t lose no sleep:そのことによって眠れなくなることはない→気にならない
catch one’s eye:目にとまる、目が奪われる
walk on by:歩いて通り過ぎる→すれ違う
last:[動詞]続く
til the end:ずっと
think up:考えだす

 

2004年に発表され、その後世界的に大ヒットしたあの曲。さて、この曲の歌詞はどんなものだろう。僕は片想いと決別する歌なのかなって思う。

僕とこの曲の話をした人の多くがそう思っていたのだけど、”You’re Beautiful”のフレーズだけでロマンチックなラブソングだと勘違いされがちだ。まず、それは否定する。その上でミュージックビデオと合わせて考えてみよう。

単純にビデオの内容だけ見ると自殺なんだよね。実際にWikipediaを見ると「日本の伝統的な自殺方法に則り、靴と身につけているものを脱ぎ、ブラントは高所から飛び降り自殺をしている」とも記載されている(出典記事が削除されているので真偽は定かではないけど)。そういう文脈で言えば歌詞の中の”いい考え”は自殺のことで、「君と一緒になれないのならすべてを捨ててしまおう」という歌ともとれる。

ただ、僕としてはこの曲は「一時の恋心と別れを告げ、前向きに人生を歩もう」という歌と解釈する。さらに言えば、極端かもしれないけど「その時々の恋心に高ぶりはするがそんなことは僕の人生とは何の関係もない」ともとれるかもしれない。

ブラントはこの曲で一貫して「彼女と一緒になること」に対してリアリティを持った言及をしていない。具体的な行動を起こそうという方向性がないのだ。彼女と一緒になれないというその時の気持ちとしてはとても悲しいものなのだと思う。ただ、そのことに対して無理だと割り切って、時が経てばまた忘れてしまう、そんな自分に対して半ば白けている。僕はそんな解釈をしてる。ある意味愛の否定の歌なのかなって。

そういう文脈で考えるのならば”そんなことは気にしない 僕にはいい考えがあるんだ”は、「そこまで本気で悩みきれやしない、だって僕は僕の人生(plan)があるんだから」という意味にもとれる。その都度生じる大切なものであるはずの感情を、ある程度の葛藤こそあれ簡単に殺してしまえる自分に対して、自殺というセンセーショナルなオマージュによってあらわしているのかなって。

考えすぎ?

この曲はなかなか考えさせられるテーマだと思う。こう言っちゃうと月並みだけど、軍隊経験等の彼の一筋縄ではないキャリアが背景にあるんだろうなと。なかなか他の誰かでは例えられない独特の声と上質なメロディ、そして、こんな単純な話をさらっとドラマチックに描くライティングセンス。さすが世界的大ヒットだなと。よかったら今一度聴いてみてください。

和訳と考察 There There. (The Boney King of Nowhere.) / Radiohead

youtu.be

 

In pitch dark
I go walking in your landscape
Broken branches
Trip me as I speak
真っ暗闇の中 君の風景に向かって歩いていく
ちょうど今木の枝に足を取られたよ

Just 'cause you feel it
Doesn't mean it's there
Just 'cause you feel it
Doesn't mean it's there
感じるからといってそこに在るとは限らない
感じるからといってそこに在るとは限らない

There's always a siren
Singing you to shipwreck
(Don't reach out, don't reach out
Don't reach out, don't reach out)
Steer away from these rocks
We'd be a walking disaster
(Don't reach out, don't reach out
Don't reach out, don't reach out)
君を破滅に導く警告音で辺りはいっぱいだ
(近づくなよ 近づくなよ 近づくなよ 近づくなよ)
そんなものに近づいてはいけない 僕らも歩く災害になってしまうかもしれない
(近づくなよ 近づくなよ 近づくなよ 近づくなよ)

Just 'cause you feel it
Doesn't mean it's there
(Someone on your shoulder
Someone on your shoulder)
Just 'cause you feel it
Doesn't mean it's there
(Someone on your shoulder
Someone on your shoulder)
There there
感じるからといってそこに在るとは限らない
(誰か肩に乗ってるぞ 誰か肩に乗ってるぞ)
感じるからといってそこに在るとは限らない
(誰か肩に乗ってるぞ 誰か肩に乗ってるぞ)

There there
まあまあ…

Why so green and lonely?
And lonely, and lonely?
Heaven sent you to me
To me, to me?
どうしてそんなに青ざめていて
寂しそうなの
君は天から僕への
贈り物なのに

We are accidents waiting
Waiting to happen
We are accidents waiting
Waiting to happen
僕らは災い
今にも起こりそうだ
僕らは災い
今にも起こりそうだ

 

単語
pitch dark:真っ暗闇
landscape:風景、景色
branch:枝
trip:つまづかせる
as I speak:(even as we speakで)ちょうど今私たちが話している間に
この場合独り言を言いながら歩いているんでしょうか
just because... doesn't mean〜:...だからといって〜とは限らない
洋楽で慣用表現覚えるとスムーズだし記憶に残りやすいのでオススメです。
shipwreck:難破、難破船
reach out:手を伸ばす、手を差し出す
there, there:まあまあ、よしよし(慰めの言葉)

 

2003年の『Hail To The Thief』から。
この曲はかなり歌詞の内容に沿ったミュージックビデオなので、観ながら聴くとわかりやすい。

「感じるからといってそこに在るとは限らない」が印象的だけど、これってつまり「見たり聞いたりしただけの情報は本質を突いているとは限らない」っていう情報社会への警鐘なんだと僕は捉える。そう考えるとサブタイトルの"The Boney King of Nowhere. =どこにもいない骨ばった王様"も示唆的だ。誰と戦ってるの?って場面を見ることはよくあるのではないだろうか。

今の時代は、この曲が発表された2003年よりはるかに情報へのアクセスが容易になった。TwitterなどのSNSが発展し、自分から発することも誰にでも簡単にできる。だからこそ今一度この曲のメッセージに立ち返ってみよう。

ネットを見ていると、気分を害するニュースや"これはおかしい"という論調に溢れている(siren)。また、それらに対する誰かの考え方に納得がいかないこともある。それらはそれ自体として悪いものとは限らないのだけど、もしそういった情報を一面的になぞって自分のものになった気がして、それで発信を行おうものなら、僕らも簡単に他人を傷つけてしまうおそれがある(walking disaster, accident)。

そうならないためにも、簡単に鵜呑みにしないこと、或いは最初から信用できないものには近づかないこと(don't reach out, stay away from〜)が必要になってくる。

あらゆる情報が簡単に手に入りすぎるがゆえに、僕らは感化されて気難しい顔をしてしまうことがある(green & lonely)。でも、あなたが本当はそんなに気難しい人じゃないことは直接会って知っている僕にはわかるんだよ(heaven sent you to me)。会ったことのないあなたもきっと暖かい人なんだと思う。ただ、みんな情報社会に毒されてしまっているだけなのかもしれない。冷静に想像を働かせて、感情的にならずにみんなを思いやれたらなあと思う。僕自身そこらへん弱いし。まあまあ、落ち着いていこうよってね。

今一度この曲のメッセージに耳を傾けてみてはどうだろうか。よかったらぜひ。

和訳と考察 Videotape / Radiohead

youtu.be

When I'm at the pearly gates
This will be on my videotape, my videotape
Mephistopheles is just beneath
And he's reaching up to grab me
僕が天国の門の前にいる時
その姿はビデオテープに記録される
僕のビデオテープに
メフィストフェレスが頭上から
僕を掴もうと手を伸ばしている

This is one for the good days
And I have it all here
In red, blue, green
Red, blue, green
これは良き日を過ごしていくための第一歩
すべてはここに
赤 青 緑
赤 青 緑

You are my center
When I spin away
Out of control on videotape
On videotape
On videotape
On videotape
On videotape
On videotape
僕がくらくらした時も君は僕の真ん中だ
正気を失った姿がビデオテープに記録される
ビデオテープに
ビデオテープに
ビデオテープに
ビデオテープに
ビデオテープに

This is my way of saying goodbye
Because I can't do it face to face
I'm talking to you after it's too late
No matter what happens now
You shouldn't be afraid
Because I know today has been the most perfect day I've ever seen
これは僕なりのさよならなんだ
面と向かっては言えないから
手遅れになる前に言ってるんだ
何が起ころうとも
恐れることはない
今日が僕の今までの人生で一番素晴らしい日だって知ってるから

 

単語
pearly gate:天国の門
Mephistopheles:メフィストフェレス
メフィストフェレス(一般にMephistopheles、他にMephistophilus, Mephistophilis, Mephostopheles, Mephisto, Mephastophilis)は、16世紀ドイツのファウスト伝説やそれに材を取った文学作品に登場する悪魔。一般にゲオルク・ファウストが呼び出した悪魔として知られ、ファウストを題材とした作品での風貌や性質がよく知られている。中でもゲーテの『ファウスト』が有名。(Wikipedia)
reach up:手を伸ばす

 

2007年の作品『In Rainbows』の最終曲。この曲の公式な解釈が見つけられなかったので僕なりの解釈を。これは別れの歌かなって思う。それも、とっても前向きな別れの歌。

 

僕は日々生まれ変わっていきたい(pearly gates)。誰のためでもなく僕のため。誰に見られなくとも僕が見ている(my videotape)。

怠惰な心根や欲望を掻き立てる様々なこと(Mephistopheles)が僕を代わり映えのない日常に繋ぎとめようとするけど(reaching up to〜)、負けたりしない。

この決意はこれから肯定的な日々を送っていくための第一歩だ。すべて僕にできる範囲で僕は肯定的な日々を送っていくことができる。色々な事があって色々な感情を持つ(red, blue, green)だろうが、負けたりしない。

落ち込んだりハイになったり(spin away, out of control)することもあるだろう。でもそんな時に「君にとって素晴らしい僕でいたい」っていう僕のど真ん中にある気持ちが、僕を強くさせる。そんな姿は僕自身正気を失ったようにも見えるけど、僕自身そのことに不安を覚えたりもするけど、僕は大丈夫だよ。君がど真ん中だから。

僕は僕なりに過去の僕と別れを告げるよ。こんなことは直接説明できたもんじゃないから、こういう風に歌のかたちにしてるんだ。僕の心の中だけだとメフィストフェレスに負けちゃってダメになりそうだからさ。

何があっても僕は大丈夫。今日を肯定的に生きている僕がここにいるから。

 

トムの意図は知らないけど僕はこんな解釈。この曲の「君」が具体的にだれのことかはわからないけど、誰であれこういう風に思える存在がいるのは強いなって。勝手に思わせてもらってごめんやけどね。

自己否定や他人への皮肉が中心だったRadioheadのメッセージの中で、この曲は異彩を放ってるよなー。特に最後の一節はLiftの"Today is the first day of the rest of your days, So lighten up, squirt / 今日は君の人生の初日だ。だから元気出せよ、坊や"と並んでRadiohead史上最も肯定的なメッセージだと思う。よかったらぜひ。