Album & Song of the Year 2020 so far
はろーべいべーあべです。 いやいややっとこさですよ。『Album of the Year 2020 so far』です。振り返り企画みたいなややこしいことはじめちゃったものだから遅れましたが、やっと出せますよ。
さてさて今回は一部の例外を除き大体6/15あたりまでからの選出です。なのであれとかあれとかは入っていませんが、それは下半期の楽しみとしておきましょう。あと今回は「ある程度聴き込んでるやつ」と自分の中で線を引いています。極論「ジャケがやべえ!」で入れてもいいと思ってるのですが、ちょっとまあ僕のポリシーみたいな感じで。結果として自分の中ですごくしっくりくるものとなったので、「聴き込み具合」は一つの尺度として持っといていい気はしました。
今回はアルバム16枚+曲16曲、おまけで特筆すべき選外5枚です(ちょっとずるいやり方だ)。わりと駆け足の雑感って感じですが、アルバムからどうぞ!
- Album of the Year 2020 so far 16〜11位
- Album of the Year 2019 so far 10〜6位
- Album of the Year 2020 so far 5〜1位
- Song of the Year 2020 so far 16〜11位
- Song of the Year 2020 so far 10〜6位
- Song of the Year 2020 so far 5〜1位
- おまけ 特筆すべき選外5選
Album of the Year 2020 so far 16〜11位
16. The Slow Rush / Tame Impala
Tame Impalaがここというのはライブ / クラブの視点が欠落した上半期だったことの証左のような気がしています。グリーンステージで浴びたら年間3位くらいになるよなと思ってたんですが、また来年ですね。
15. 十 / 中村一義
『再構築』から再接続する『金字塔』2020。再録ベストが割と気に入らなかったんですが、ほぼ一人で作ったこの作品を通じて改めて彼のキャリアに繋がれた気持ちです。円環を閉じて改めて踏み出す1枚だなと。
14. 夢の骨が襲いかかる! / 長谷川白紙
タイトル、ジャケ、曲目だけで雄弁過ぎません?“LOVEずっきゅん”をこんな風にしちゃうのかよっていう彼の変態じみた感性はそのままに、音楽家としての基礎体力も存分に感じられる意欲作です!
13. Ghosts VI: Locusts / Nine Inch Nails
『Together』も好きですが、不穏な時世をより顕在化させたようなこちらを。簡素なアンビエンスの中でもタッチや音の高低だけで彼を感じされるサウンドはさすが。Nine Inch Nailsはトレントレズナーなんですよね。
12. At The Beginning / THE NOVEMBERS
前作の方が直感的には好きだなと前置きした上で、これほどディケイドの始まりをピンポイントで描けるのはさすがだなと。あとユッキー絡むとこうなるのか。リピートでスパイラルしていく繰り返し聴きたい作品ですね。
11. Earth / EOB
トムやジョニーとともまた違う素直な肉感的表現。全体としてだれる部分もあって佳作って感じもしますが、“Shangri-La”をはじめとしたビビッとくる曲も多々あってソロ1枚目としては大満足です。
Album of the Year 2019 so far 10〜6位
10. Sixteen Oceans / Four Tet
もっと上でも良かったのですが、彼を性格づけていたダウナーなベースのニュアンスがウワモノ方面に移行している部分がまだ飲み込み切れていないのでここです。確実に2020年的だよなとは感じるものの。
9. Set My Heart on Fire Immediately / Perfume Genius
彼の何が好きかって、小難しいことも全部ひっくるめてポップに昇華しているところ。洗練された構築美も感じさせつつ、単純に歌メロに恍惚を覚えるんですよ。このバランス感覚はなかなか他にない気がします。
8. Suddenly / Caribou
オンライン飲み会でみんなで聴いたのが懐かしい!新たな楽しみ方の可能性を感じましたね。再開後のクラブのダンスフロアで浴びたい、踊りたくなるピースがいっぱい詰まったアルバムです。
7. The Neon Skyline / Andy Shauf
彼がいればいいんですよ。タイトルとは裏腹に朗らかなポップフォークがくすぐったい作品ですが、特に“Try Again”はベルセバの“Another Sunny Day”だけが満たしていた僕の心の隙間を埋めてくれました。
6. Sister / Ultraísta
トムヨークらしさだと感じていたものの半分はナイジェルイズムなのだろうなと改めて。表情抑えめなローラの歌声もトムに慣れた耳にはフレッシュに響きましたね。近年のトムワークの補助線としても必聴です。
Album of the Year 2020 so far 5〜1位
5. Walking Like We Do / The Big Moon
最初戸惑ったんです。ギター鳴らせよと。でも聴き込むにつれこれが2020年のポップのかたちなのかもなと感じて、今ではフェイバリットです。HAIMの在り方に引き上げられた部分もあるんですが、これに関してはまた。
4. Notes on a Conditional Form / The 1975
これでもかと注ぎ込んだバリエーションはバンドサウンドの未来を予感させますよね。最も2020年的な作品は別にあるけど、10年後ディケイドベストに入りそうな、時代の先を見越した作品だと思います。
3. いいね! / サニーデイサービス
『いいね!』て。でもそれくらい率直で直感的なバンドサウンドが、デビュー作みたいにフレッシュにあらわれていて思わず笑みが溢れます。混み入り過ぎたこの時代、この状況の過渡期に、鮮烈に僕を撃ち抜きました。
2. græ / Moses Sumney
満を辞しての2nd。ジャケも含めてやはり時代と最もクリティカルに呼応するのは彼だなと。毎度のことながら僕はElliott SmithとRadioheadが軸にならざるを得ないんですが、最も理想的な邂逅がここにはありますよね。
1. Punisher / Phoebe Bridgers
それほどマークしてなかったので若干不本意ですが、良いのだから仕方がない。風格あるサウンドメイクに惹かれますが、ヘッドフォンで聴くとLo-Fiなチリチリした感じも存分に味わえて、何度でも聴きたくなる作品です。
続いては曲の方を!
Song of the Year 2020 so far 16〜11位
16. Like I'm Winning It / Girlpool
彼女達もいろんな色を見せてくれますね。アルバムではあまり出てこないエレクトリックな萌芽を見せつつ、持ち味の生音の鳴りと絡みつくような深いヴォーカルは健在です。この路線でアルバム出してもいいのでは。
BEST 11 TRACKS OF THE MONTH – March, 2020 | TURN
15. 抱きしめた feat. 曽我部恵一 / HANDSOMEBOY TECHNIQUE
2年前のボロフェスタで聴いてたので満を辞してですね!曽我部さんの歌う刹那の感傷に、つかずはなれずの程よい距離感のプロダクションが心地良くて、名フィーチャリングだなって思います。
HANDSOMEBOY TECHNIQUE、曽我部恵一をヴォーカルに迎えた新曲"抱きしめた"を配信&7インチでリリース。過去作品のストリーミング配信も初解禁! | アンテナ
14. Fdf / cero
先に進み続けながらも、まったく到達点という感じがしないのが彼らの凄さですよね。この曲も度肝を抜かれました。機械的と肉感的のそれぞれの良さを折衷しながら身体に没入していく感じ、フロアで浴びたい。
13. Hello My Friend / DÉ DÉ MOUSE
自粛期間とかではなくいつも通りDJ配信を続ける彼ですが、子守唄のような音色に祭り囃子みたいなフレーズが絡む脈絡のなさは正しく夢心地って感じで、また目が覚めてフロアで会う日を心待ちにさせてくれますね。
12. I Love Louis Cole (feat. Louis Cole) / Thundercat
隠しきれないLouis Cole愛っすね。タイトル直球すぎやろ、そしてBPMはやっ。でも割と単調めなベースプレイの中でさえ、Thundercat固有の煌めきがビンビン感じられてめっちゃツボでした。
11. So We Won't Forget / Khruangbin
ちゃんとアルバムを聴けていないんですが、従来のタイのフィーリングをちょっとトロピカル風味にヴォーカルが彩る感じはとても好きです。ヘヴンの夜がこの上なく合っていましたが、これなら昼のビーチもアリですね。
Song of the Year 2020 so far 10〜6位
10. Dine N Dash / The Chats
なんすか無銭飲食って。結構気難しい音楽が好きな傾向にある僕ですが、こういうボケアホバカが臆面なく掻き鳴らす姿にたまらなく勇気づけられる僕もいます。しょーもなって笑っちゃう。それがいいんですよ。
9. サーカスナイト / 君島大空と塩塚モエカ
このリリースはびっくりしましたね。ただ聴いてみると七尾旅人を媒介にこの2人が繋がるのはとてもしっくりくる。シンプルなカバーですが2人の情感と想いが生々しくて、カバーかくあるべしとでも言いたくなります。あと↓の記事この2人にMomくんもいるし、我ながらクリティカルな選び方したなと自画自賛。
8. Canaria / トクマルシューゴ
彼の表現には好奇心のまま無邪気に楽しむワクワクが詰まっていて、そんな気持ちさえ罪であるかのように感じさせられた上半期の中ですごく勇気づけられました。トノフォンもめっちゃ良かったですよね。
7. Graceland Too / Phoebe Bridgers
なんといってもBoygeniusの面々が揃う最終2曲ですよね。バンジョーを基調としたブルーグラスへの憧憬が、苦々しい感情ごと柔らかく包んでくれます。こういうところはROTH BART BARONと通じるかもしれない。
6. カルトボーイ / Mom
アルバムはまだ聴けてないですが、下半期の台風の目となることはこの曲だけでもわかります。フォーク×ヒップホップというテーマ性の中でも掛け合わせ方のレイヤーが多様なのが面白い。アルバムこころして聴きます。
BEST 8 TRACKS OF THE MONTH – May, 2020 | TURN
Song of the Year 2020 so far 5〜1位
5. Love in Mine / Big Thief
去年は完全にBig Thiefイヤーでしたが今年もそれは変わりませんね。村田タケルくんがSchool In Londonの一番最初に流していたのが印象に残っています。来日は延期となりましたが、また来年の楽しみと考えたいですね。
4. Murder Most Foul / Bob Dylan
みんな言ってますがこの曲とスフィアンの“America”です。ただただ呆然と聴き入ってしまう重厚なナラティヴは何の気なしに置くだけで時代性を纏ってしまう。ディランがディランたる由縁を見せつけられましたね。
3. Me & You Together Song / The 1975
マンチェ!確実に新境地も刻みながらも、こうやってスタンダードに立ち返るところも痺れますよね。イアンがいてリアムがいて、そのど真ん中でこの曲が響くスーパーソニック。なんとか無事開催されますことを…!
2. idontknow / Jamie xx
僕らはダンスフロアで踊りてえんだよ!世界中に溢れたそんな気持ちをこれほどドンピシャで拾い上げてくれた曲もありませんわ。時に大胆にジリジリと移り変わる様はまさしくクラブナイトじゃないですか?知らんけど。
BEST 10 TRACKS OF THE MONTH – April, 2020 | TURN
1. The Steps / HAIM
ダントツですね。アルバム全体に表現された「ネクストフェイズのジェンダー感」を象徴するような曲。あまりに晴れやかに響く”Do you understand? You don't understand me, baby”が端的に物語ってるよなと。
あとがき
所感としては、聴き込んだ甲斐もあって自分の中で無理のない納得できる並びになったなと思います。The 1975やMoses Sumneyをはじめとした大作主義なリリースもある一方で、リモートで作ったという君島大空と塩塚モエかみたいなインスタントなリリースも多くて、アルバムと曲でわりと性格が分かれたなと感じています。
ただ一番感じるのは、クラブ / ライブの視点が欠落したリストになってしまったなということ。例えば先日かなり久々に梅田のNOONに行ったんですが、そこで流れていたSports TeamやThe Strokes(フジにも来るはずでしたね)を聴いて、かなり印象が変わったのです。例年通り日常的にクラブに通って来日公演にもちょいちょい行ってフジの予習もしてって流れがあったのなら、全然違ったものになっただろうなって感じはしますね。これは僕だけでなく音楽好きみんなにとって大きなことだと思います。
下半期はどうなるでしょうか?まだまだ以前のように戻るのは厳しいかもしれないし、この欠落感とは向き合いながら過ごしていこうと思います。でもその中でも、日常的だった現場をより大切に感じるようになった今年の上半期だったので、徐々に再開もされてきたフロアは(気をつけつつ)楽しんでいきたいと思ってます。
おまけ 特筆すべき選外5選
Woman In Music Pt. III / HAIM
リリース前から1位候補筆頭で、期待に違わぬ出来なのですが、流石に聴き足りないので今回は保留です(Bob DylanやKhruangbin、まだ聴いてないArcaあたりも同様)。でも僕が思うところの「2020年的」が一番あらわれているのはこのアルバムな気がするので、年末まで聴き込むとします。フジで観たかったな。
The New Abnormal / The Strokes
めっちゃ悩んであえて外しました。相変わらずカラフルなギターアンサンブルを包む、どことなく1stっぽいLo-Fiなプロダクション。広がりを増したジュリアンのヴォーカル。とてもいい感じです。ただいかんせん期待値が高過ぎた。ライブで塗り替えてくれるかと思ってたらその機会も失われてしまったのでこの位置です。でも“Bad Decisions”みたいな曲が書けるならまだまだソロでもなくVoidzでもないストロークスに期待できますね。
紡ぐ / ofulover
4月にインタビュー。忖度で入れるのはアンフェアなのでここに入れますが、KANA-BOONやミスチルみたいなポピュラリティも見えてきそうな萌芽が沢山詰まった快作です。気付いたら“春を越えて”が頭の中でリフレインしてるんですよね。今度はライブハウスで会いましょう!
ofulover『紡ぐ』 神戸の街から全国へ羽ばたく〈フロアを沸かす自惚れロックバンド〉 | Mikiki
狂(KLUE)/ GEZAN
実はまだ聴けてないんですよ。聴こうとするたび“狂”の途中で「これは生半可な覚悟では聴けないわ…」と再生を停止するばかりです。ただこれを聴かないと2020年ははじまらないとでも言わんばかりの熱情はひしひしと感じます。未だどこか納得いってない去年のフジのライプレポも含め、彼らが僕にもたらしてくれるのは目を逸らせない危機感と身を焼く渇望感です。下半期は覚悟を決めてここからはじめましょう。
GEZAN | FUJIROCK EXPRESS '19 | フジロック会場から最新レポートをお届け
3.15.20 / Childish Gambino
飲み込み切れていないというのが正直な感想です。これもGEZANと近い部分もある。ただ2020年はこれとThe Weeknd『After Hours』を抜きに語っちゃいけない気がしているので、下半期の一つの課題として置いておきましょう。
こんなところですかね。長々ありがとうございました。今年の残りもなんしか楽しくやっていきましょ〜