(don't get any) Big Ideas

音楽周りのあれこれかれこれ

和訳と考察 Fake Plastic Trees / Radiohead

youtu.be

Her green plastic watering can
For her fake Chinese rubber plant
In the fake plastic earth
That she bought from a rubber man
In a town full of rubber bands
To get rid of itself
彼女は緑色のプラスチック製のじょうろで
中国製の造花に水をやる
このまがい物のプラスチック製の星で
それはゴム製の男から買ったもの
ゴム製の考えで満たされたこの街で
結局は棄てられるもの

It wears her out, it wears her out
It wears her out, it wears her out
それが彼女をすり減らす それが彼女をすり減らす
それが彼女をすり減らす それが彼女をすり減らす

She lives with a broken man
A cracked polystyrene man
Who just crumbles and burns
He used to do surgery
For girls in the eighties
But gravity always wins
彼女はイカれてしまった男と暮らしている
愚かなポリスチレン野郎だ
ボロボロになって燃え尽きちまってる
彼は外科医をしていて
80年代は女の子に需要があったものだが
結局重力には敵わない

It wears him out, it wears him out
It wears him out, it wears
それが彼をすり減らす それが彼をすり減らす
それが彼をすり減らす それが彼を…

She looks like the real thing
She tastes like the real thing
My fake plastic love
But I can't help the feeling
I could blow through the ceiling
If I just turn and run
彼女は本物みたいに見える
本物みたいな味わいがある
僕の偽物のプラスチック製の愛
でも気持ちを抑えることができない
僕が振り返り走り出すのなら
天井さえぶち抜けそうだ

And it wears me out, it wears me out
It wears me out, it wears me out
それが僕をすり減らす それが僕をすり減らす
それが僕をすり減らす それが僕をすり減らす

If I could be who you wanted
If I could be who you wanted all the time
All the time
All the time
君の望む僕であれたら
いつだって君の望む僕であれたら
いつだって
いつだって

 

単語
watering can:じょうろ
rubber:ゴム rubber、plastic、fake、polystyreneと繰り返されますが、すべて「偽物、まがい物」の象徴として捉えます。
get rid of:処分する、取り除く、免れる
1番Aメロは馬鹿長いけど単なる名詞節
(Her〜) watering can (for〜)(that〜)(in〜)(to〜)
こいつが彼女をすり減らす…
Aメロの内容に彼女/彼/僕がすり減らされる構造。
wear out:すり減らす
cracked:砕けた、愚かな
crumble:ボロボロになる、ボロボロにする
surgery:外科医
gravity:重力 この言葉は「本物、逆らうことのできない大きな流れ」の象徴として捉えます。
can’t help〜:〜を(〜することを)抑えられない
celing:天井

 

90年代のロックの金字塔『The Bends』より。超レア曲だったものの近頃はライブで度々披露されるようになってファンもびっくりしたこともタイムリーな名曲だ。最初にWikipediaから背景を引用。曰く、”歌詞はロンドンの開発地区カナリー・ワーフの変遷を動機とする消費社会への批判を、恋愛感情を軸にする普遍的なバラードに落とし込んだもので、多義的。” カナリー・ワーフってのは第二次大戦後廃墟となった街が金融街として再興を遂げるけど、90年代にまた廃れた場所みたい。その文脈で考えてみる。

例のごとくミュージックビデオを観ると、トムはじめとしたメンバーがスーパーマーケットみたいなカラフルなところでカートで運ばれていて、他にも様々な人物が象徴的に現れる。極め付けはその誰もが最後はその場から出て行くこと。誰も彼もが様々なものを消費し、それが本当に欲しいのかもよくわからず消費し、その姿はともすれば自分達が消費されているかのような、そんな印象を受ける。

歌詞に目を向けてみると、繰り返し繰り返し「まがい物」について言及されている。何か価値のあるものを消費しているようでいて、実は「まがい物」に消費されている(wear out)。しかし本物(gravity)は確かに存在していて、時折その存在に気づかされてどうしようもなく気が滅入ってしまう(wear out)。そんな自分や社会を憂いているのだと捉える。

ただ、この曲の真価は後半の「it wears…」から。

「彼女は本物みたいに見える」 彼女が本当に本物なのかはわからない。ただそんなことはどうでもよくて、自分の愛情さえまがい物のように感じてしまう(my fake plastic love)僕にとってでさえも、感情を高ぶらせて離さない。そんな彼女は本物に違いない。一緒にいたい。でもこんなまがい物の僕にそんなことが許されるわけが…

悲しい曲や…

消費社会アンチというテーマを持ちながらも普遍的な人間関係の歌にできるあたりは流石。よかったらぜひ。