和訳と考察 Motion Picture Soundtrack
『Kid A』ver.
early ver.
Red wine and sleeping pills
Help me get back to your arms
Cheap sex and sad films
Help me get where I belong
赤ワインと睡眠剤で
君の腕の中に帰ることができる
安っぽいセックスと悲しい映画で
僕のいるところに帰ることができる
I think you're crazy, maybe
I think you're crazy, maybe
君は狂っている、多分
君は狂っている、多分
Stop sending letters
Letters always get burned
It's not like the movies
They fed us on little white lies
手紙なんかを送るのはやめよう
そんなものはただ塵となる
映画とは違うんだ
あんなもののせいで僕らは優しい嘘に慣らされてしまった
I think you're crazy, maybe
I think you're crazy, maybe
君は狂っている、多分
君は狂っている、多分
I will see you in the next life
来世で会おう
Beautiful angel
Pulled apart at birth
Limbless and helpless
I can't even recognize you
美しい天使
生まれながらに引き離された
手足がない 救いがない
僕も君がわからない
I think you're crazy, maybe
I think you're crazy, maybe
I think you're crazy, maybe
I think you're crazy, maybe
I think you're crazy, maybe
I think you're crazy, maybe
君は狂っている、多分
君は狂っている、多分
君は狂っている、多分
君は狂っている、多分
君は狂っている、多分
君は狂っている、多分
I will see you in the next life
来世で会おう
(early ver.の歌詞も訳しています)
2000年の大問題作『Kid A』以降Radioheadの歌詞は抽象的で一見してよくわからない方向に向かうけど、この曲は比較的わかりやすい。Creepの頃からある曲なので当然といえば当然だけど、ここまで進歩したバンドがそれでも昔の曲を持ってくることに「何も難しいことを言いたいわけではなくて彼らは昔から変わらず彼らなんだ」ということを感じる。
とはいえアコーステイックなearly ver.と違って、特別派手ではないものの荘厳な雰囲気を持っているのが『Kid A』ver.だ。彼らは変わっていない。でも確かに変わっている。
歌詞について。まあ自殺の曲だけど、幸か不幸か”赤ワインと睡眠剤で”死ねるのかということには疑問がある(勿論睡眠剤の種類と量によっては本当に死にますが)。彼は臨死体験を味わいながらも何度か帰ってきている、或いは死なないことを薄々わかっていて自傷行為をしている(“君の腕の中に〜”は心配する配偶者が助けてくれるということ)のかもしれない。
ただ、それは幸か不幸か。死のうとしても死に切れず、気休めにしかならない”セックス”や、何か遠くのことに思える”映画”を観ることでなんとか正気を保つけど、そんな自分も心底くだらない。
“手紙”なんかで本音をつらつら書いてみても君には何も伝わらない。そればかりか仲を取り持つための”優しい嘘”をついてしまう自分もいる。”映画みたいに”ハッピーになりたいのに。
君は僕とは違う。気持ちの通じない君は”手足がない”かのようで”救いがない”。本当は君のこと大好きなのに。”美しい天使”のように思っているのに。
君は狂っているんだ。全部狂っているんだ。僕を取り巻くものは全部狂っているんだ。僕もなのか?全部狂っているんだ。もうこんな世界はさよならだ。でも君とはまた会いたい。
かなり好き勝手書いてるけど、この曲は途方もない絶望と否定の歌だと思う。ただ、この曲が初めて書かれて20年ほど経つ今でも、彼らは生きて戦っている。その姿を思うと僕も強く生きていきたいと思える不思議な歌だ。よかったらぜひ。