(don't get any) Big Ideas

音楽周りのあれこれかれこれ

和訳と考察 True Love Waits / Radiohead

新作に入ってたのが最も衝撃的だった"True Love Waits"。今回はそのことをちょろっと。新作の雰囲気に合ってるのはあのかたちだけど、やっぱトムの弾き語りver.もいいよね!

 

youtu.be

 

I'll drown my beliefs
To have your babies
I'll dress like your niece
And wash your swollen feet
僕は信念を曲げてでも
君との子どもがほしい
君の姪のように着飾って
君の腫れあがった足を洗うよ

Just don’t leave
Don’t leave
ああ どこにもいかないで
どこにもいかないで

I’m not living
I’m just killing time
Your tiny hands
Your crazy kitten smile
僕は日々の暮らしを営んでるんじゃなくて
ただただ時間を潰しているだけなんだ
君の小さな手
夢中になった子猫みたいな笑顔

Just don’t leave
Don’t leave
ああ どこにもいかないで
どこにもいかないで

And true love waits
In haunted attics
And true love lives
On lollipops and crisps
本当の愛は
幽霊の出る屋根裏部屋にある
本当の愛は
ぺろぺろキャンディーやポテトチップスの中にある

Just don’t leave
Don’t leave
ああ どこにもいかないで
どこにもいかないで

 

drown:水浸しにする
niece:姪
swollen:ふくれた、腫れあがった
tiny:小さな
kitten:子猫
haunted:何かにつかれた、幽霊の出る
attic:屋根裏、屋根裏部屋
lollipop:ぺろぺろキャンディー
crisp:ポテトチップス

 

2001年のライブアルバム『I Might Be Wrong Live Recordings』より。公式に録音された音源はなく、ライブでたまにアコースティックバージョンが披露される曲(2016年『A Moon Shaped Pool』に収録)。

Radiohead流の『結婚しようよ』なのかな。正直『Kid A』以降の彼らからこんなにもパーソナルで淀みのない歌が飛び出してくるのは驚きなのだけど、何か超越的なことを言ってそうにも聴こえる彼らの人間味が感じられる名曲。

結婚したことのない僕が結婚に言及するのは笑い話なのだけど、僕なりの解釈で。

僕はなかなか神経質で頑固な人間で信条みたいなものもあるのよ。でも君と一緒になって子どもを授かるためならば、その信条を多少なりとも曲げる覚悟はあるんだ(drown、捨てるとまでは言っていないのがポイントかな)。赤ちゃんが怖がらないような格好もしよう(dress like your niece)。君が疲れたら癒そう(swollen foot)。

話は飛ぶのだけど、僕は少し勘違いしていて、結婚するためには何か諦めなければいけないものだと思っていて。ただ、近頃友達と話している中で思うことがあって、「何かを諦めたことを示してしまうと相手に重荷を背負わせてしまうことになる」ってことを思ったところで。だから、この曲も相手に言うのではなく、内なる覚悟みたいなものなんだと思う。そして"swollen foot"なんだけど、この言葉は「水膨れした」みたいな意味もあるのよね。これは言わないまでも自分の信条をdrownした僕と同様に、自分の信条をswollenさせた君もいて、お互い言わないまでもそのことをわかっていて受け入れ支え合おうみたいな感じなのかと思う。

この曲の大切なポイントが"I'm not living〜"のくだり。日々の生活に何かしらのやりがいを感じて、充実して生きているのだけど、君との生活を前にするとそんなことまったく無価値に思えてしまう、そんな微妙な心境の話だと思う。君は無邪気な気持ちを持った素敵な人(crazy-kitten smile)。そんな君と一緒になることが何にも代え難い喜びだって思える。そんな心境。

そして、本当の愛とは。幽霊の出る屋根裏部屋ってなんか実感わかないけど、洋画でよくある子ども達が親に隠れて遊んでたりするあれのことかな?キャンディーとポテトチップスは言わずもがな。小さな子ども達が楽しそうにしている姿を心底愛しいと思える、それが本当の愛なのかなって。

こんなん書くの恥ずかしいわ。

結局のところRadioheadが世界最高のバンドであり続けているのは、何も難しいことばかり言ってるんじゃなくて、こういう多くの人の心にすっと入ってくるメッセージがあるからだと思うのです。よかったらぜひ。